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Pega's Diary

<p class="font_8">昨日は思考のサードプレイス、2回目のイベントとして読書会を開催しました。</p>
<p class="font_8">7人の方にお集り頂いたのですが、元メディア関係の方、外資系企業にお勤めの方、本に造詣の深い方など、幅広い分野の方にご参加頂き、かなり濃い~話になったので、レポートしたいと思います。</p>
<p class="font_8"><br></p>
<p class="font_8">「社会派小説を読む」というテーマを設定したものの、私自身「社会派小説とは何か?」ということについて、少し曖昧だったので少し調べてみたところ、「社会派小説」という用語は辞書的なものには載っていませんでした😅</p>
<p class="font_8">「社会小説(social novels/social problem novels)」という言葉はあって、「社会問題を主題として社会批評や政治批評の意図を含んでいる小説」というのが大体共通した定義で、日本では明治時代に提唱され始めたジャンルということです。</p>
<p class="font_8">とはいえ、ネットで検索すると、「社会派小説」という言葉は広く使われており、お薦め本を紹介するウェブページなどが幾つも見つかります。例えば、「日々是読書旅(https://doku-tabi.com/)」というサイトでは、社会派小説について「この私たちが住んでいる社会の中に潜んでいる社会が抱える問題をテーマとして扱った小説のこと」と定義していました。これは自分の感覚にも合致するので、この意味で「社会派小説」という言葉を使わせてもらうことにしようと思います。</p>
<p class="font_8"><br></p>
<p class="font_8">ちなみに、「社会派推理小説(社会派ミステリー)」という用語は、推理小説のジャンルの一つとして1960年頃から使われているそうで、これと「社会小説」とのミックスとして「社会派小説」という言い方が出てきたのかな、という気がしています。</p>
<p class="font_8">「社会派ミステリー」以外にも、「経済小説」、「政治ドラマ小説」、「スパイ小説」といったものもあり、これらは「社会派小説」のサブカテゴリ―ということになるのだろうと思いました。</p>
<p class="font_8"><br></p>
<p class="font_8">前置きが長くなりました。</p>
<p class="font_8">「社会派小説を選ぶ時の視点」として、出てきたのは下記のようなものでした。</p>
<p class="font_8"><br></p>
<p class="font_8">・現在起こっていることを知るため、より深く理解するため</p>
<p class="font_8">・人の心の裏にある“闇”が細かく描かれているのを読むことで、別の角度から出来事を眺めることが出来る</p>
<p class="font_8">・テーマの背後にある切なさをリリカルにえぐる瑞々しい感性</p>
<p class="font_8">・テーマそのものより、その奥にある人の心の繊細さや心の動きが描かれているのが面白い</p>
<p class="font_8">・作品が書かれた時代や作者の年代が違っても、主人公が置かれた立場で感じる葛藤や挫折感など、現在の自分に共通する感情や感覚があって共感できる</p>
<p class="font_8">・現代社会、現代人が抱える歪みに気付かされる</p>
<p class="font_8">・映像化された作品を見たことがきっかけで、小説も読み始めた</p>
<p class="font_8">・学生時代に法律を勉強していた時、過去の判例の時代背景を理解したくて</p>
<p class="font_8">・日本の大企業で、組織がどのように動くのか知りたかった</p>
<p class="font_8"><br></p>
<p class="font_8">参加者の方たちからご紹介があった本は下記のとおりです。</p>
<p class="font_8"><br></p>
<p class="font_8">・黒木 亮 『エネルギー』(2008年、日経BP社)</p>
<p class="font_8">・手嶋 龍一 『ウルトラ・ダラー』(2007年、新潮社)</p>
<p class="font_8">・文藝春秋 『松本清張の世界』(1992年、文藝春秋)</p>
<p class="font_8">・池井戸 潤 『空飛ぶタイヤ』(2006年、実業之日本社)</p>
<p class="font_8">・桐野 夏生 『OUT』(1997年、講談社)</p>
<p class="font_8">・中村 文則 『R帝国』(2017年、中央公論新社)</p>
<p class="font_8">・高橋 和巳 『我が心は石にあらず』(1967年、新潮社)</p>
<p class="font_8">・朝井 リョウ 『死にがいを求めて生きているの』(2019年、中央公論新社)</p>
<p class="font_8">・奥野 修司 『赤ちゃん取り違え事件の十七年 ねじれた絆』(1995年、新潮社)</p>
<p class="font_8">・塩田 武士 『罪の声』(2016年、講談社)</p>
<p class="font_8">・月村 了衛 『白日』(2020年、KADOKAWA)</p>
<p class="font_8">・中山 七里 『テミスの剣』(2014年、文藝春秋)</p>
<p class="font_8">・横山 秀夫 『ノースライト』(2019年、新潮社)</p>
<p class="font_8">・池井戸 潤 『オレたちバブル入行組』(2004年、文藝春秋)</p>
<p class="font_8">・松本清張 『砂の器』(1961年、光文社)</p>
<p class="font_8"><br></p>
<p class="font_8">やはり松本清張は人気で、2004年のTBSドラマ版と1974年の映画との比較談義など色々と話が尽きませんでした。松本清張と言えば多作で知られ、文藝春秋社が出している全集は66巻にも及ぶ膨大なものですが、以前は出版社の主力商品だった有名作家の「全集」が、昨今は殆ど作られなくなっている現状についてのお話しもありました。確かに、自分が子供の頃は、百科事典や文学全集といったものが応接間の本棚に並べられて(飾られて?)いましたが、最近は見かけなくなったような気がします。</p>
<p class="font_8">参加者の一人は、紹介された本の1つについて、登場人物のモデルになった方を知っているといったビックリなお話も飛び出して、とても盛り上がった楽しいひと時でした。</p>

2024-02-26

Reasons to pick up social novels | 社会派小説を選ぶ時の視点

Third Place for Thinking 2nd Event | 思考のサードプレイス第2回

<p class="font_8">12月9日、<思考のサードプレイス>の第1回イベントが無事終わりました。</p>
<p class="font_8">私自身、随分と長いこと、“サステナブルではない”生活を続けていたので、一度ゆっくり考えてみたいと思っていたテーマでした。また、「サステナビリティなんてことを言い始めたら、周りから面倒な奴だと思われたりしないか」と不安だったのですが、色々な視点から色々なお考えを持つ方たちに集まって頂き、とても有意義な時間を過せました。</p>
<p class="font_8">今回のイベントで強く感じたのは、「サステナビリティ」には本当に様々な次元と視点があるということでした。自分にとっては「資本主義的なマインドから、どうやって抜け出すか」というのが最大の課題だったので、それを当然のこととして前提にし過ぎていたかも知れません。もっと、ずっと大きな視点で「サステナビリティ」について考えている方たちとディスカッションできたことは、自分にとって大きなプラスでした。</p>
<p class="font_8">例えば「地球環境」という大きな視点でサステナビリティについて考えると、個人として出来ることは小さすぎて、「自分には何も出来ない」というところで止まってしまいがちですが、自分の無力を認めつつも、「今の自分で何が出来るか?」という問題意識に移行しようとしている方たちが多かったことは、とても心強く感じられました。</p>
<p class="font_8">ある参加者は、「『大きい問題だから、何も出来なくても仕方ないよね』と無力感に安住してしまうのと、『(今は)何も出来ない』けれどその問題を忘れずに心に留めておくことには大きな違いがあり、心にとどめておくだけでも、無意識に小さな行動につながり、その連鎖によって問題の解決の一端になる可能性があるのではないか」と仰っていたのですが、今回のイベントがそういう無意識の連鎖に繋がっていってくれれば、とても嬉しいです。</p>
<p class="font_8"><br></p>
<p class="font_8">今回のスペシャルゲストとしてお迎えした福井智也さんのお話も要約しておこうと思います。福井さんとは、今年4月に地域通貨に関するセミナーで知り合いました。製薬メーカーのCSR部門で働く傍ら、ソーシャルビジネスに従事する企業やNPOへの転職エージェントにも携わっている福井さんですが、もともとは営業畑で長く働いてきたという方。福井さんのサステナビリティについての考えや思いは、競争やノルマに追われていたときの経験を経て培われたもので、単なる理想論ではなく、だからといって、個人の経験に基づくノウハウでもなく、とても興味深くまた共感できる内容でした。</p>
<p class="font_8">福井さんは、私たちがいつの間にか<体制>に絡めとられていて、自分の価値観に無自覚になっているために建設的な対話が出来ていないのではないかという問題提起から始まりました。</p>
<p class="font_8">たとえば、「地球環境を守るべき」という<判断>には<善悪>の評価が含まれてしまうので対立を生み出すことが多いですが、「緑豊かな地球に住みたい」という<感情>、から始める方が、実り多い対話へと繋げることが出来るのではないか、というわけです。福井さんにとっての<感情>を要約すると、「無意識レベルまで掘り下げた自分自身が大切にしたい価値観」ということになるのですが、自分の価値観を掘り下げるための方法として、福井さんはNVC(Nonviolent Communication=非暴力コミュニケーション)の活用を提案します。「評価」ではなく「観察」を行うことで、自分の感情と自分が望んでいることに気付いていくというプロセスを活用することで、善悪の対立から解放され、自分軸で考え、動けるようになる。</p>
<p class="font_8">福井さんのお話で面白いのは、「怒り」といったネガティブな感情や、自分を良く見せたいという「エゴ」や「ずるさ」も決して悪いものではないという点です。それを抑圧してしまうと、むしろ正義の仮面の下にそれを正当化しようとすることにも繋がりかねない。エゴやずるさも人間らしくあるための重要な要素として大切にすることで、他者を思いやる気持ちも自然と養われることになる。</p>
<p class="font_8">「すべき」という自己犠牲的な利他ではなく、「自分を満たす利己への態度」へと変容することが、むしろサステナビリティに繋がるのではないかという結論はとても示唆に富むものでした。</p>
<p class="font_8">イベント後の二次会で聞いた話によると、NVCでは非暴力的な対話のプロセスを学ぶだけではなく、怒りを吐き出すことも行っているそうで、あるがままの自分を受け入れることまで実践に組み込まれていて、とても面白いと思いました。</p>

2023-12-21

Third Place for Thinking: Event Report (1) / 思考のサードプレイス第1回イベント報告

本当のサステナビリティって何?― 善悪の彼岸の、その先へ ―

<p class="font_8">先週土曜日の銀座ソーシャル映画祭(https://www.gsff.jp/)は、岩崎孝正監督による「映画の作り方ワークショップ」ということで、私も参加させて頂きました。岩崎さんは福島県出身で、もともとはジャーナリズムの勉強をしていたのが、震災をきっかけに映画製作を始められたという少々異色の人物です。来月には、初の長編「海鳴りが聞こえる」というドラマも劇場公開されるとのことで、今後の活躍が期待されます。</p>
<p class="font_8">今日は、先日拝見したオムニバスフィルムについて、感じたことを少し書いてみようと思います。</p>
<p class="font_8"><br></p>
<p class="font_8">GSFFでは、4本の短編映画を束ねた「NEW WORLD~岩崎孝正監督作品集」を視聴し、1本ごとに監督による解説と質疑応答を挿むという形でした。</p>
<p class="font_8">この作品は、ドキュメンタリー、ショートフィルムフィクション、ルポルタージュ、ショートフィルムフィクションという形で編まれたオムニバス。震災後の福島という事実に対する眼差しと、それを巡る感情との交錯が仄めかされているようです。</p>
<p class="font_8">それぞれの作品の中でも、過去と現在(あるいは未来)、また、亡くなってしまった命と残された命が交錯しています。</p>
<p class="font_8"><br></p>
<p class="font_8">個人的に一番面白いと思ったのは「カツテノミライ」という3番目の作品でした。</p>
<p class="font_8">津波と原発で変わり果てた故郷から、主人公は“カツテ”日本の四大公害と呼ばれた被害を受けた地域を訪れます。「なにが見える、ミライから?」という呟くような歌詞がリフレインされるミニマル音楽に載せて、最初に映し出されるのは、美しい入り江。</p>
<p class="font_8">これは現在の姿。でも、今見ている風景は、もしかしたら、公害になる前の、過去の風景だったのかもしれない…。作品中に登場する人たちは、皆、食に携わる仕事をしているのだけれど、公害を経てカツテの海や土壌を取り戻した彼らは、ミライの生活へと繋がっている。</p>
<p class="font_8">「カツテノミライ」とは、循環であり、過去から現在、現在から未来へと続く繋がり。</p>
<p class="font_8"><br></p>
<p class="font_8">そんなことを考えていると、岩崎さんの映画が、どことなく新海さんの映画に似ているように思えてきました。</p>
<p class="font_8">例えば「君の名は」。時空を超えた繋がりを持つタキとミツハ。二人は、過去を書き換えるという大仕事をやってのけた後、お互いのことを忘れてしまうが、「自分には何かが欠けている」という感覚を払拭できずにいる。</p>
<p class="font_8">現在と過去、そして未来との繋がり。そして、忘れ去られてしまった何か。この「欠けている何か」は、それぞれの映画の中の登場人物たちが探し求めているものなのではないだろうか。</p>
<p class="font_8"><br></p>
<p class="font_8">岩崎監督ご自身に尋ねたところ、新海監督からの直接的な影響はないとのこと。同時代的な共鳴なのかも知れません。もう一度見返して、もう少し深く考えてみたいと思いました。</p>
<p class="font_8"><br></p>
<p class="font_8">New World:</p>
<p class="font_8">http://www.imageforum.co.jp/cinematheque/1047/index.html</p>
<p class="font_8"><br></p>
<p class="font_8">海鳴りが聞こえる:</p>
<p class="font_8">https://uminari.brighthorse-film.com/index.html</p>

2023-09-12

なにがみえる、ミライから?―カツテノミライ/What do you see from the past? ― Future of the past

岩崎孝正さんのオムニバス映画が、何故か新海誠にシンクロして見えた件

<p class="font_8">9月11日ということで、この出版社を立ち上げて初めて出した『悪人が癒されるとき』について、今日は少し書いてみようと思います。とはいえ、イラクとアメリカのことなどについては、少し前にまとめて書いたので、今回は少し違った角度から考えてみることにします。</p>
<p class="font_8"><br></p>
<p class="font_8">詳しいことは、ぜひ『悪人が癒されるとき』をお読み頂ければと思うのですが、「知的で思慮深く、礼儀正しくて温情に篤いウダイ・フセイン」という、従来とは全く異なるウダイ像の真偽が、この物語の論点の一つであることは間違いないでしょう。</p>
<p class="font_8">催眠士ラリーが、ウダイ自身にとって致命的な障害を回復するための最後の頼みの綱として招聘した人物であり、また、アメリカとの関係を回復したいといういうのが、当時のイラクの本音だったとすれば、ウダイがラリーに対して礼儀正しく、そして手厚いもてなしをするのは至極当然のことであり、むしろ、ウダイの自己中心的な性格を浮き彫りにしたものだったのかも知れません。</p>
<p class="font_8">しかしながら、このような見方はまだ皮相なものにすぎないのではないか、暴君として知られたウダイの奥底には、とても繊細で優しい心があったのではないか、ラリーの物語はそんなメッセージを私たちに伝えてくれるのです。</p>
<p class="font_8"><br></p>
<p class="font_8">他者の心は、自分自身の心を通じて想像することしかできず、それを“完璧に”知ることは不可能です。心理学では「投影」といって、人は自分の心の中にある者を、他者(あるいは、世界に)に映し出して見るのだそうです。そうだとしたら、ラリーは、ウダイの中に<悪>や<暴力>を投影することが無かったから、ウダイは温厚な人物として、彼の前に立ち現れたのかも知れません。</p>
<p class="font_8">この<ウダイ>は、果たして本物だったのか、それとも偽物だったのか?</p>
<p class="font_8">もし、<世界>が、この<自分>を通じてしか存在しえないものだとしたら、この<世界>の中では、それがウダイの真実の姿だったのかも知れない。そうだとしたら、ラリーがイラクに滞在していた時、ちょうどその地球の裏側で起こっていたことは、誰の世界の中での出来事だったのか?</p>
<p class="font_8"><br></p>
<p class="font_8">これは、少々極端な考え方かも知れませんが、この本を読むと、ついそんなことを考えずにはいられないのです。</p>
<p class="font_8">ラリーがイラクで経験したことは、私たちの<現実>について深く考えさせられる体験だと思います。</p>
<p class="font_8"><br></p>
<p class="font_8">本の詳細はこちら:<a href="https://www.studio-pega.com/items/%E6%82%AA%E4%BA%BA%E3%81%8C%E7%99%92%E3%81%95%E3%82%8C%E3%82%8B%E3%81%A8%E3%81%8D">悪人が癒されるとき (studio-pega.com)</a></p>

2023-09-11

9.11-アメリカとイラクで起こっていたこと/on 9-11-2001, what was happenining in the US and Iraq

自分自身が見ているものは、自分自身の投影/The world we see is a projection of ourselves

<p class="font_8">先週土曜日の午後、南武線谷保駅近くにあるまちライブラリーでトークイベントを開催させて頂きました。お申し込みが少なめだったので、こじんまりとした会になりそうだと思っていたのですが、当日の飛び込み参加が2名ほどあり、定員8名のところ、7名の方にお集まり頂いて嬉しい想定外でした。</p>
<p class="font_8">今回はご参加の皆様にもトークに加わって頂けるようにしようと、こちらからの質問を幾つか準備していきました。最初の質問は「『悪人が癒されるとき』というタイトルから、どんなストーリーを想像しますか?」というもの。この質問に対するご自身のお考えを話してもらってアイスブレイクを行ったところ、和やかな雰囲気が出来上がって、その後のディスカッションもなかなかの盛り上がりでした。</p>
<p class="font_8">まちライブラリーは、くにたちダイヤ街という古い商店街の入口にあるのですが、古い建物のようで梁が見えて、その上はすぐ屋根になっています。イベントの日は夕方まで雨だったのですが、屋根に当たる雨音が何故か心地よく、温かな場を作ってくれていました。</p>
<p class="font_8">自由な発想と鋭い視点でのご意見をたくさん頂いて、私自身も非常に勉強になり、とても楽しく充実した時間を過ごせたことに感謝です。</p>

2023-04-18

Live talk report (3) / イベント開催報告 (3)

On a rainy Saturday afternoon / 雨の土曜日の午後に

<p class="font_8">3月5日に2度目の『悪人が癒されるとき』発行記念トークイベントをカフェ里葉さんで行いました。今回は12名の方にご参加頂き、前回に続いて非常に充実した時間となりました。</p>
<p class="font_8">今回のトークでも、歴史的な背景や心理的な分析を行うことで、この本が持つ意味について考察を行いました。</p>
<p class="font_8">トークイベントでは、ご参加下さった方たちからのご質問が非常に興味深く、私自身の理解を深めてもくれます。前回頂いたご質問の中に、「原作のタイトルは “Healing the Enemy”なのに、『悪人が癒されるとき』と受動態で訳されたのはどうしてですか?」というご質問を頂きました。質問された時には、「翻訳しているときに、ふと心に浮かんだタイトルだったからです」と実際の出来事をお伝えしたのですが、今回のトークを準備する中で思考を深めるうち、私自身がどうしてそのようなタイトルにしたのか改めて気付かされるということもありました。</p>
<p class="font_8">その理由を書き始めるととても長くなってしまうので別の機会に改めますが、この『悪人が癒されるとき』というタイトルを思いついたとき、自分ではとてもしっくりくる感じがあり、これ以外のタイトルを付けることは考えられなかったのですが、このストーリーが持つ深い意味を考えると、やはり最も相応しいタイトルだったように思います。翻訳をしながら、無意識のうちに、この本のメッセージを受け取っていたのかなと思うと、さらに興味深く思いました。</p>

2023-03-14

Live talk report (2) / イベント開催報告 (2)

Implication of the Japanese title / 邦訳のタイトルに込められた意味

<p class="font_8">かめには不思議な安心感がある。『うさぎとかめ』に出てくる亀にしても、『ファインディング・ニモ』に出てくるクラッシュにしても、『ドラゴンボール』のかめ仙人にしても、〝かめ〟はのんびりしているのに賢い。</p>
<p class="font_8">カメブックスも多分そんな感じの本屋さん。都心の書店と違って、膨大な量の本と知識に圧倒されることも、急かされることもなく、マイペースで本と付き合ってもいいってことに気づかせてくれる本屋さんだと思う。</p>
<p class="font_8">JR本八幡駅から6号線を下ること15分、京葉道路にぶつかったら住宅街に入ってすぐ。めちゃめちゃ味わいのある文字で「123ビルヂング」と書かれた入り口を抜けて階段を上る。</p>
<p class="font_8">4階が最上階で、そこが本屋さんのスペース。</p>
<p class="font_8">「しょんぼりコーヒー」のサインがあって、岩城伸子さんの短歌が書き添えられています。</p>
<p class="font_8">安心してしょんぼりとコーヒーが味わえる、穏やかな空気。本を読むのは孤独な行為だけれど、そこから何か面白いものに繋がりそうな予感も感じられる。本好きの人にとっても、本を読まない人にとっても、貴重な場所に思えました。</p>

2023-02-28

Walking upstairs in an old building /古びたビルの階段を上がると

Micro book store kamebooks / 小さな本屋さんカメブックス

<p class="font_8">「スタイルとは、複雑なものごとを簡潔に表現する手段である」</p>
<p class="font_8">これはジャン・コクトーの名言ですが、そうだとしたら、「タイトル」は何?</p>
<p class="font_8">本にとって、タイトルとは、新しい旅へと通じるドア。同じ旅に繋がるドアは幾つもあるかもしれないけれど、著者が選んだドアは、新しい視点を切り開く特別なもの。</p>
<p class="font_8">荻窪にある本屋さんタイトルに入るときも、そんな期待とワクワク感が膨らみます。棚に並ぶ本は独自の切り口で選ばれていて、新しいのにどこか懐かしさを感じさせる本に出合えます。</p>
<p class="font_8">お店の奥には小さいけれど居心地の良いカフェがあります。看板メニューのフレンチトーストはアパレイユがしっかりと染み込んでいてフワフワしっとり。今まで食べた中で一番美味しいフレンチトーストだったかも。カフェラテも味わい深くて、これも美味。週末の贅沢なひと時でした。</p>

2023-02-26

French toast and Title / フレンチトーストとタイトル

A luxury pause in the weekend / 週末の贅沢なひと時

<p class="font_8">ロシアがウクライナに侵攻して、今日でちょうど1年。</p>
<p class="font_8">核の話もちらつき始めて、なんだか不安な気持ちが高まるのと同時に、いまだに争いが終わらないのを見て、とても悲しくなります。そんな中、先日、上映会に参加させて頂いた大川印刷さんの平和への取り組みがとても印象的なのでご紹介しようと思います。</p>
<p class="font_8"><br></p>
<p class="font_8">上映会の最後に、代表である大川社長が「ウクライナでも、ロシアでも、『平和』を意味する手話は同じ」ということで制作された小さなメモ帳を紹介してくれました。このメモ帳は、右下に小さなイラストが描かれていて、パラパラ漫画として「平和」を意味する手話の仕草が見えるようになっています。それぞれの面が、ウクライナ語とロシア語になっていて、どちらも同じことが〝見える化〟されているというわけです(※注)。</p>
<p class="font_8"><br></p>
<p class="font_8">ロシア語とウクライナ語はどちらもスラブ語派東スラブ語群に属するため、言葉が似ているのは当然なのですが、「平和には敵味方は関係ない」というのが大川さんのご趣意です。</p>
<p class="font_8">「どちらかを応援し、どちらかを敵対視するのであっては、争いは繰り返され、平和は実現しない」と大川社長は仰っていたのですが、まったくその通りだと思いました。</p>
<p class="font_8"><br></p>
<p class="font_8">ウクライナとロシアのことだけではなく、身近な争いについても、同じことが言えるのだろうと思います。ストレスが多いと、自分もつい相手を非難してしまうことが多いので、より大きな平和に繋げるためにも、身近な出来事の中で考え方を変えていかないと、と思いました。</p>
<p class="font_8"><br></p>
<p class="font_8">※注:「手話って万国共通なのでは?」と思う方もいらっしゃるかも知れませんが、文化によってジェスチャーが異なるのと同じで、手話は地域によって異なるものとなっているそうです。</p>
<p class="font_8"><br></p>
<p class="font_8">大川印刷FLIP BOOK MEMO「PEACE(ロシア語/ウクライナ語版)」</p>
<p class="font_8"><a href="https://ohkawainc.thebase.in/items/66054709"><u>https://ohkawainc.thebase.in/items/66054709</u></a></p>
<p class="font_8"><a href="https://www.youtube.com/watch?v=Yuimxbd0Gr8"><u>https://www.youtube.com/watch?v=Yuimxbd0Gr8</u></a></p>
<p class="font_8"><a href="https://www.ohkawa-inc.co.jp/2023/01/31/%e6%89%8b%e8%a9%b1%e3%81%a7%e6%8c%a8%e6%8b%b6%e3%80%8cpeace%e3%80%8d%e3%83%a1%e3%83%a2%e5%b8%b3%e3%81%ab%e8%be%bc%e3%82%81%e3%81%9f%e6%83%b3%e3%81%84/"><u>大川印刷 | » 手話で挨拶「PEACE」メモ帳に込めた想い (ohkawa-inc.co.jp)</u></a></p>

2023-02-24

Prayer for Peace / 平和への祈り

To terminate the chain of wars / 戦いの連鎖を断ち切るために

<p class="font_8">大川印刷さん(<a href="https://www.ohkawa-inc.co.jp/"><u>https://www.ohkawa-inc.co.jp/</u></a>)は、横浜で長く続く印刷会社さんです。環境に配慮した印刷に注力されていて、エネルギーや森林資源の節約だけではなく、社会課題の解決に向けた活動など幅広い取り組みをなさっています。先月から始まった上映会も、そういった活動の一つです(<a href="https://withgreenprinting.com/"><u>https://withgreenprinting.com/</u></a>)。&nbsp;</p>
<p class="font_8"><br></p>
<p class="font_8">先週の金曜日が2月の上映会で、アフガニスタンの少女が主人公の映画『ソニータ』を鑑賞しました。ソニータは非常に困難な状況の中で、ラッパーになることを目指します。アフガニスタンでは、娘を裕福な男性に嫁がせることが一般的に行われており、ソニータの家族も例外ではありません。</p>
<p class="font_8">ソニータは難民としてイランに滞在していましたが、イランでは女性が人前で歌を歌うことは法律で禁じられていました。ラッパーになるため必死に活動する彼女ですが、その努力がむしろ裏目に出てしまいます。女性が公衆の前で歌うことを禁じるというイランの法律を犯したため、彼女を支援していた保護施設もソニータに対するサポートを打ち切らざるを得ませんでした。そのあと、彼女がどうなったかについては、是非映画をご覧頂ければと思います。</p>
<p class="font_8"><br></p>
<p class="font_8">&nbsp;彼女の強さはとても感動的で、どんな困難にあっても歌うことを止められなかったのは、その才能のためだということが伝わってきました。 この映画を見る機会を与えてくれた大川印刷さんに心から感謝したいと思います。とても感動的で、勇気を与えられる映画でした。</p>

2023-02-21

SONITA / ソニータ

Great Challenge by an Afgan rapper / アフガニスタン出身ラッパーの果敢な戦い

<p class="font_8">『悪人が癒されるとき』の出版を記念して、2月5日(日)、大塚のBook &amp; Garden 里葉さんでトークイベントを開催させて頂きました。(写真はイベント時の様子です。) 初めてのイベントだったので人が集まるか心配でしたが、定員を超える13名の方にお越し頂きました。</p>
<p class="font_8">著者ラリーからは、日本の読者の皆様に向けたビデオメッセージが届きました。&nbsp;</p>
<p class="font_8"><br></p>
<p class="font_8">今回は、「ウダイ・フセインは何故敵国アメリカから催眠士を招いたのか?」という問いを立て、イラクの近代史を読み解きながら、本に書かれていないことを、ちょっと深読みしていくというスタイルでトークを進めました。 戦争や紛争の背景や経緯を少し丁寧に見ていくことで、ウダイ・フセインやイラクの人々の心境を色々な角度から想像してみることが出来るようになります。そして、そうすることで、『悪人が癒されるとき』に描かれている人々の態度や言葉が、さらに深く、具体的なイメージを持って感じられるようになるのではないかと思っています。 トーク最後には、参加された方たちからのご質問やご感想などを伺うことができ、とても充実した時間となりました。今回ご参加下さった皆様と、里葉さんには心から感謝しています。本当にありがとうございました。 3月5日(日)にはVol2として、もう一つの別の問いを立て、考察を深めようと思います。ご都合が合えば、是非ご参加下さい!</p>

2023-02-12

Held a live talk at a book café / イベント開催報告

First publication celebrated / 初出版を記念して

<p class="font_8">『私たちはいま、イラクにいます』(講談社)は、イラク戦争の開戦後、6月に発行された本です。 著者はシャーロット・アルデブロンという12歳のアメリカのメーン州に住む少女。母親が弁護士をしており、アフリカや中米のハイチに移り住んだ経験を持ちます。</p>
<p class="font_8">この本は、この少女が2003年2月に地元の教会で行われた平和集会で行ったスピーチ"What About the Iraqi Children?"の抄訳で、フォトジャーナリストである森住卓氏の写真とともに綴られています。&nbsp;</p>
<p class="font_8"><br></p>
<p class="font_8">いま私は、どう感じているかを伝えたいと思います。 ただし、〝私〟ではなく、〝私たち〟として。</p>
<p class="font_8"><br></p>
<p class="font_8">&nbsp;彼女が、イラクの子供たちに自分を重ね合わせて非戦を訴える思いと、森住さんが撮ったイラクの美しい子供たちの写真。イラク戦争に限らず、武力に訴える大人たちと比べて、ずっと〝おとな〟だなあと思わずにはいられませんでした。 短い本なので、実際に手に取って読んでみて頂ければと思います。</p>

2023-02-07

Books on Iraq / イラク関連の本紹介 (8)

Voice of children / 子供たちの声

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