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Published on 12th December, 2022
Healing the Enemy by Larry Garrett

悪人が癒されるとき

アメリカ人催眠士のイラク体験記

横暴と残虐で知られるサダム・フセインの長男ウダイ。
その心の奥底に触れ、父親のような愛情を向けた療法家の体験談。

悪人が癒されるとき

目次

第一章 イラクへの招待
第二章 イラクまでの六〇〇〇マイル
第三章 バグダッドに到着
第四章 ウダイ・フセインとの対面
第五章 世界中が恐れる男の心の中へ
第六章 魔法の街、バグダッドを行く
第七章 スーフィ寺院での奇蹟
第八章 「世界で最も偉大な国」
第九章 古代都市バビロンを行く
第十章 バグダッド最後の夜
第十一章 シカゴへの帰途
第十二章 FBIからの電話
第十三章 ザカーリからの依頼
第十四章 二度目目のイラク招聘
第十五章 バグダッド再訪一日目:湾岸戦争の傷跡
第十六章 九・一一、イラクに独り
第十七章 ウダイからのプレゼント
第十八章 経済制裁
第十九章 アミリヤ・バンカー
第二十章 悲劇の真ん中で
第二十一章 病気、贈り物、そして帰国
エピローグ 第二次湾岸戦争

ISBN978-4-910963-00-6
C0098 ¥1800E
定価1980円(本体1800円+税10%)

サダム・フセインの長男ウダイの治療のため、イラクに招かれたアメリカ人催眠士の体験談。著者は2001年の5月と9月にイラクを訪問しましたが、2度目の滞在中に9・11テロが発生。
文字通り〝小説よりも奇なり〟といえる出来事で、その時、何が起こっていたのか是非読んでみて頂ければと思います。著者が本作を完成させたのは2003年ですが、イラク戦争の影響により、アメリカではブラックリストに入ってしまい、2008年になってようやく出版されました。
著者自身の葛藤や〝患者〟との関わりだけではなく、砂漠の景色やイラクの文化、イラクの人々の生活、遺跡や歴史に神話、FBIとのやり取り、湾岸戦争や経済制裁の影響、そして催眠に関する話など、驚くほど幅広い内容が盛りだくさんに詰め込まれていて、色々な角度から楽しむことが出来る作品です。

A memoir of an American hypnotist, who was invited to Iraq in 2001 to treat Udai Hussein, the eldest son of Sadam Hussein. In that year, the author visited Iraq in May and September. During the second visit the September 11 attacks occurred in the U.S.
The story literally is "stranger than fiction", and is absolutely worth reading to see what was really happening at that time in Iraq. It was in 2003 when the author completed his draft but the book was not published until 2008 for being blacklisted in the U.S.
This work is enjoyable from many different aspects, not only the author's internal conflict and his relationship with "the patient" but also the sceneries of desert, Iraqi's culture, daily lives, historical stories and monuments, investigation by FBI, the impact of the Gulf war and economic sanctions, and most of all, hypnosis.

湾岸戦争での攻撃とその後の厳しい経済制裁を経てもなお、イラクの人々はアメリカ人催眠士に対して憎しみや恨みを持っていませんでした。それどころか、9.11の悲劇のニュースが流れた後、イラクの人々から同情と哀悼をしめしたのです。それに対し、著者は驚きを隠せませんでした。
愛する人たちを戦争で失った人の苦悩と悲しみを、誰よりも深く知っていたからこそ、イラクの人たちはアメリカの人々の悲しみを汲み取ることが出来たのかも知れません。
そうであるとすれば、問題を解決するのは戦いではなく、他者への深い理解と思いやりなのかもしれない。
そんなことを考えさせられる作品として、本作をお薦めしたく思います。

(本書からの引用)
この国の人たちは特別だ。彼らの愛は、私がこれまで見たことも無いような類のものだ。十一年前の湾岸戦争で、自分たちの街を破壊し大勢の命を奪っただけではなく、戦争後も飢え、病気、品不足で多くの人々を苦しませてきたアメリカに対し、イラク人は憎しみなど抱いていない。湾岸戦争のせいで、この国が被った様々な痛手を私は数多く目にした。しかし、イラクの人々は、それを何とも思わず、街に戻ってそれを立て直してきたのだ。この街の辺り一帯を歩き回ってみたが、湾岸戦争の痛手を引きずっている者など殆ど居ないと言ってもいいくらいだ。これほど壊滅的な痛手を被った人々が、現在、アメリカが襲われている悲劇に対して、どうしてこれほど同情を寄せてくれるのか、私には分からない。(p.330、第17章)


Despite the attacks and sanctions due to the Gulf war, Iraqi people had no hatred or resentment to the American hypnotist. Quite the contrary, they showed their deepest sympathy and condolence for the news of the 9.11 tragedy. This was a big surprise for the author.
It might be their experiences of losing loved ones that made them possible to understand and sympathize with the grief and sufferance of American people during the tragic events.
Hignly recommended as a thought-provoking book: it is not conflicts that bring the solution, but the deep understanding and compassion to others.

(Cited passages from the original book)
These people are very special. They love as I have never seen love before en masse. They hold no hatred for the country that ruined their lives for eleven years and took thousands of lives at the time of the Gulf War—and millions through its after-effects of hunger, sickness, and want. I have seen much of the devastation that they suffered resulting from the war. They act as though it is nothing. They just went back out and rebuilt. Nearly every neighborhood that you walk through carries scars of the Gulf War. I wonder how people that have been through this kind of devastation can be so compassionate at this time with the horrors that we are suffering in the United States. (pp.211-212, Garrett, Larry. Hypnotizing the Devil, by Kindle)

作者紹介:ラリー・ギャレット
1942 年生まれ。ギャレット催眠・健康センター所長。1968-69 年にアメリカ催眠研究所(The National Hypnotic Institute)にて、催眠のトレーニングを受ける。その後、米国催眠士協会 (NGH)認定催眠士として、50 年以上に渡って、催眠を行っている。催眠士としての活動に加え、イリノイ州のコミュニティカレッジでは 30 年近く教鞭を取る他、医師と協力して催眠を活用した治療なども数多く行っている。
(参考 URL:http://www.larrygarrett.com/

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